キャビア×日本酒=マリアージュするのか。⑤

    皆様、こんにちは。


    前回に引き続き、
    2026年8月に行いました、キャビアと日本酒のテイスティングイベントについて記しております。今回は、イベント準備中に起こったトラブルから、【マリアージュについて】思わぬ議論ができた件を中心に書いてまいりたいと思います。




    イベント準備期間中、
    私の肝を随分と冷やしてくれたトラブルが発生しておりました。



    私たちマダムスタージャンキャビアは、
    いわばキャビアのセレクトショップです。
    自社で養殖場を持っているわけではなく、特定のキャビアブランドの代理店でもありません。
    私自身が、これまで食べてきた世界中のキャビアの中から、自信を持っておすすめできる養殖場のキャビアを仕入れております。



    その選定基準は以下の通りです。
    ▪︎チョウザメたちの生活環境を大切に考えていること
    ▪︎不自然な養殖方法を用いず、「Natural」であること
    ▪︎作り手たちの人柄
    ▪︎環境に与える負荷に対して真摯に取り組んでいること


    そして、一番大事に考えている基準が、
    もし自分が来世で養殖のチョウザメとして生を授かった場合でも、
    「どうせなら、ここで暮らしたい」「ここでなら住んでも構わない」と自分事として納得ができる養殖場のものしか推さない・扱わないと、心に決めています。
    それらの条件をクリアした養殖場から届いたキャビアを都度テイスティングし、最もおいしい状態でお客様にお届けしています。


    そんな”替えのきかない”キャビアに、
    届かないというアクシデントが発生したのです。



    お取引をしているポーランドの養殖場は、人にも動物にも環境にもWelfareを大事に考えていらっしゃいます。その取り組みの一つとして、サマーバケーションが設けられています。
    と言いつつも、チョウザメたちのお世話は毎日必要ですので、それらを除く業務が毎年7月~9月の間お休みとなります。それに備え予め注文をするのですが、
    休み期間を目前に現地から届いた連絡に言葉を失います。その内容は、
    『注文量が多くて、要望分のバエリが用意できなかった。ごめんね。代わりにオシェトラにしておいたから許して』



    ・・・・・・・・


    今回のイベントはそもそも、
    「土田酒造のプリンセスサリー×マダムのバエリとのマリアージュを味わっていただきたい!」という思いからはじまっております。にもかかわらず、主役のバエリが届かないという、私にとっては頭が真っ白になるような一大事でした。
    おまけにちょうどその頃、イベント情報を公開したばかりでしたので、
    引くに引けない状況の中、「どうする?中止か?延期か?」と、嫌な汗が頬をつたう事態でした。




    バエリが提供できるよう、でき得る策を順に講じながら、万が一に備え、プランBの検討が急務でした。星野さんに事情を話し、代替案として「オシェトラに合う土田のお酒を見つけてほしい」と無茶なお願いをし、力をお借りすることに。
    すぐさまオシェトラをお送りし、待つこと数日。
    候補となるお酒を2つ選んで連絡をくださいました。
    そのときのメールがこちらです。



お世話になります。土田酒造の星野です。
さて、昨夜やっと酒との相性確認を実施できました。相変わらず上質な味わいで、本当に素晴らしい品物だなと感激しました。
お酒は当日を想定してワイングラスのようなタイプのグラス(ピッコロ)で、冷やしたもので合わせました。
結果、私の推しは[木桶壌]か[tsuchida12]でした。どっちか一つ、なら木桶壌です。

[木桶壌]
土田では上位クラスの酒で、群馬県産の自然栽培米を90%精米とし、川場村の杉の木で作った木桶にて、酵母無添加の木桶で仕込むという唯一無二の味わいの酒です。この酒の風格とオシェトラの持つ風格が似ている様に感じました。熟成の具合、甘味、酸味、旨味のバランスも良く、オシェトラの余韻とも合う感じがしました。この酒は木桶仕込みであり、木桶由来の苦味や渋味を感じるのですが、冷やすとやや際立ちます。このビターな味わいが後引くフィニッシュとなるイメージでの合い方でした。個人的に苦味や渋味は大人の味覚としてとても大切に考えていますが、これが見事にハマった感じがしていて、個人的にはイチオシです。

[tsuchida12]
原酒で12%台の甘酸っぱい系の定番商品です。白麹を使う事でクエン酸を酒に乗せ、そこに米の甘さと旨みを引き出す事でボディ感を作っています。このボディの厚さがオシェトラの持つ塩味や味わいの幅とよく合うイメージを持ちました。余韻もいい具合に合っていると感じました。白麹が持つクエン酸は「冷やした方が美味しいと感じる酸」ですので、今回の冷やして提供する前提にはバッチリかなと思います。夏らしく爽やかな後味を演出するならこっちかな、というイメージです。


話はずれますが、少し気になる点がありました。R6BYのプリンセスサリーも合わせたのですが、酒の熟成の香りがオシェトラを追い越している感じで酒の方が強く感じました(美味しいの範囲内ではあります)。今までバエリにはプリンセスサリーだと思っていましたが、オシェトラよりも強く感じた酒を、オシェトラよりも余韻の短いバエリに合わせるのは少しズレてしまうのではないかと思いました。
酒もキャビアも余計な物を使わない製法であり、当然変化する前提であり、常に同じ条件ではありませんので、この辺りは一度確認しておいた方が良いかもしれないですね。



    すぐ様、土田酒造のHPで2つを購入。
    到着を待ち、キャビアと合わせテイスティングを行いました。



お世話になっております。
マダムスタージャンキャビアの松居です。
星野さんのレビューに毎回感銘を受けております。表現が正確で、読んでいてとても心地が良くて…お忙しいところ、本当に有難うございます。


さて。味の表現って難しいですよね。特に私は感覚的に味わいを察知しているために言葉にするのが難しく、メールを打っている今も、どう表現してよいのか悩みながら進めております。

私自身、味を血液型や干支、星座に当てはめて捉える節があります。これは、あくまでも私だけの感覚で、勿論どれが良い悪いでもなければ、実際の人の血液型に関連するものでもなく、本当に感覚でして…ご容赦いただければと思います。


例えば、世の中にあるキャビアの大多数を、B型RH+と捉えています。
しかし私が惚れ、これぞと思っているキャビアはそれには当てはまりません。自身が好きなバエリはO型RH-、オシェトラはA型RH-、ベルーガはAB型のRH-だと思っています。
マダムの商品として提供するものは、これらの要素を感じるか否かを一つの指標としキャビアを選んでいます。ですが生ものの為、その要素は一時的なものです。空気に触れ、時間とともに、どんなキャビアもB型RH+に向かって走っていきます。止められません。そして、様々な環境因子があるゆえコントロールは非常に困難です。けど、私がおいしいと思っているものは、そういうものです。それを表現できないのであれば、わざわざ私がやる意味はないと思っています。


そして、ペアリングや、マリアージュに対しても思うところがございます。
ペアリングは、「同じ血液型同士の同調」。マリアージュは、「異なる血液型が交わったときの化学変化や相乗効果」だと思っています。世間の方々が、これらの言葉をどう認識し常用されているのかはわかりませんが、私はそのように捉えています。少しわかりやすくするため、あえて人で例えると、
B型のRH+同士、どこか互いの意図することが解る感覚を、「ペアリング」。
とあるAB型RH+とO型RH-が偶然出会い、なぜか魅かれる・心地がいい・自然と呼吸が合う、というような感覚を、「マリアージュ」だと思っています。

私は、後者のマリアージュが好きです。……と言いましても、それはとても稀有なことで、奇跡に近いめぐり逢わせだと思います。でも、だからこそ探す意味があり、私は人生を通して様々なマリアージュを味わいたいと考えています。
そのような視点から見ますと、ご提案いただいたお酒とオシェトラは、「ペアリング」だった印象です。浅学菲才の身でありながら大変おこがましいことを申し上げすみません。

星野さんがおっしゃる通りハマっています。アリです。アリなのですが、……オシェトラの良い部分が引き出されているという感覚にはならず、求めている化学変化や互いを高めあっている様子は感じませんでした…。じゃあ、バエリはどうなのだ?そこまでなのか?というところですが、私はこれらの組み合わせに、他とは違う何か惹かれあうものを感じています。キャビアのコンディションや温度、その他の様々な要因が調和したとき、ビッグバンが起こる可能性はあると感じています。…それが何かはわからないのですが…。すみません。
星野さんの「フィニッシュの長さが合う」のような、一撃で周囲を納得させられるかっこいい言語化能力が本当に羨ましいです!・・・


前半でお伝えした通り、どんなキャビアもB型RH+へ向かって走っています。冷蔵庫の中で、今も。元々の卵のポテンシャルや、経過の速度は缶毎に異なります。抜栓するまで全くわからず、知る術は皆無です。現状、でき得る限りは尽くしておりますので、経験上はバエリでいけると踏んでおります。が、もしオシェトラになってしまう場合は、【tsuchida12】で、いかせてください。理由は、『夏らしく爽やかな後味を演出するならこっちかな、という“イメージ”』。もしもの場合は、キャビア×日本酒×8月下旬、のイメージでやらせてください。



    上記が、感想として私が星野さん宛てにお送りしたメールです。
    そして後日、このメールに返信が来ます。



松居さん相変わらずアツイ人だな〜と感激です!益々楽しみになっています。



    お願いをしておきながら断る私に対して、『アツい』と言ってくださる星野さんは、聖人か何かなのでしょうか。メールに対し自然と頭が下がり、星野さんの懐の深さに目頭がぐっと熱くなったのを覚えています。




    月日は流れ、8月中旬。お盆が過ぎた頃に、
    【バエリでいける】と確信。当初の予定通り、バエリ×プリンセスサリー、
    そして、お酒の違いもお楽しみいただけるよう、tsuchida12をラインナップに加え、イベントへと進んでまいります。



    本日も、最後までお付き合いくださり誠にありがとうございました。
    「キャビア×日本酒=マリアージュするのか。」は次回で完結いたします。
    最終話も見届けていただけますと、嬉しく存じます。
    それでは、また次回。




    ↑星野さんのテイスティング風景
    ↓松居のテイスティング風景

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