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キャビア×日本酒=マリアージュするのか。⑤

皆様、こんにちは。 前回に引き続き、2026年8月に行いました、キャビアと日本酒のテイスティングイベントについて記しております。今回は、イベント準備中に起こったトラブルから、【マリアージュについて】思わぬ議論ができた件を中心に書いてまいりたいと思います。 イベント準備期間中、私の肝を随分と冷やしてくれたトラブルが発生しておりました。 私たちマダムスタージャンキャビアは、いわばキャビアのセレクトショップです。自社で養殖場を持っているわけではなく、特定のキャビアブランドの代理店でもありません。私自身が、これまで食べてきた世界中のキャビアの中から、自信を持っておすすめできる養殖場のキャビアを仕入れております。 その選定基準は以下の通りです。▪︎チョウザメたちの生活環境を大切に考えていること▪︎不自然な養殖方法を用いず、「Natural」であること▪︎作り手たちの人柄▪︎環境に与える負荷に対して真摯に取り組んでいることそして、一番大事に考えている基準が、もし自分が来世で養殖のチョウザメとして生を授かった場合でも、「どうせなら、ここで暮らしたい」「ここでなら住んでも構わない」と自分事として納得ができる養殖場のものしか推さない・扱わないと、心に決めています。それらの条件をクリアした養殖場から届いたキャビアを都度テイスティングし、最もおいしい状態でお客様にお届けしています。 そんな”替えのきかない”キャビアに、届かないというアクシデントが発生したのです。 お取引をしているポーランドの養殖場は、人にも動物にも環境にもWelfareを大事に考えていらっしゃいます。その取り組みの一つとして、サマーバケーションが設けられています。と言いつつも、チョウザメたちのお世話は毎日必要ですので、それらを除く業務が毎年7月~9月の間お休みとなります。それに備え予め注文をするのですが、休み期間を目前に現地から届いた連絡に言葉を失います。その内容は、『注文量が多くて、要望分のバエリが用意できなかった。ごめんね。代わりにオシェトラにしておいたから許して』 ・・・・・・・・ 今回のイベントはそもそも、「土田酒造のプリンセスサリー×マダムのバエリとのマリアージュを味わっていただきたい!」という思いからはじまっております。にもかかわらず、主役のバエリが届かないという、私にとっては頭が真っ白になるような一大事でした。おまけにちょうどその頃、イベント情報を公開したばかりでしたので、引くに引けない状況の中、「どうする?中止か?延期か?」と、嫌な汗が頬をつたう事態でした。 バエリが提供できるよう、でき得る策を順に講じながら、万が一に備え、プランBの検討が急務でした。星野さんに事情を話し、代替案として「オシェトラに合う土田のお酒を見つけてほしい」と無茶なお願いをし、力をお借りすることに。すぐさまオシェトラをお送りし、待つこと数日。候補となるお酒を2つ選んで連絡をくださいました。そのときのメールがこちらです。 お世話になります。土田酒造の星野です。さて、昨夜やっと酒との相性確認を実施できました。相変わらず上質な味わいで、本当に素晴らしい品物だなと感激しました。お酒は当日を想定してワイングラスのようなタイプのグラス(ピッコロ)で、冷やしたもので合わせました。結果、私の推しは[木桶壌]か[tsuchida12]でした。どっちか一つ、なら木桶壌です。[木桶壌]土田では上位クラスの酒で、群馬県産の自然栽培米を90%精米とし、川場村の杉の木で作った木桶にて、酵母無添加の木桶で仕込むという唯一無二の味わいの酒です。この酒の風格とオシェトラの持つ風格が似ている様に感じました。熟成の具合、甘味、酸味、旨味のバランスも良く、オシェトラの余韻とも合う感じがしました。この酒は木桶仕込みであり、木桶由来の苦味や渋味を感じるのですが、冷やすとやや際立ちます。このビターな味わいが後引くフィニッシュとなるイメージでの合い方でした。個人的に苦味や渋味は大人の味覚としてとても大切に考えていますが、これが見事にハマった感じがしていて、個人的にはイチオシです。[tsuchida12]原酒で12%台の甘酸っぱい系の定番商品です。白麹を使う事でクエン酸を酒に乗せ、そこに米の甘さと旨みを引き出す事でボディ感を作っています。このボディの厚さがオシェトラの持つ塩味や味わいの幅とよく合うイメージを持ちました。余韻もいい具合に合っていると感じました。白麹が持つクエン酸は「冷やした方が美味しいと感じる酸」ですので、今回の冷やして提供する前提にはバッチリかなと思います。夏らしく爽やかな後味を演出するならこっちかな、というイメージです。話はずれますが、少し気になる点がありました。R6BYのプリンセスサリーも合わせたのですが、酒の熟成の香りがオシェトラを追い越している感じで酒の方が強く感じました(美味しいの範囲内ではあります)。今までバエリにはプリンセスサリーだと思っていましたが、オシェトラよりも強く感じた酒を、オシェトラよりも余韻の短いバエリに合わせるのは少しズレてしまうのではないかと思いました。酒もキャビアも余計な物を使わない製法であり、当然変化する前提であり、常に同じ条件ではありませんので、この辺りは一度確認しておいた方が良いかもしれないですね。 すぐ様、土田酒造のHPで2つを購入。到着を待ち、キャビアと合わせテイスティングを行いました。 お世話になっております。マダムスタージャンキャビアの松居です。星野さんのレビューに毎回感銘を受けております。表現が正確で、読んでいてとても心地が良くて…お忙しいところ、本当に有難うございます。さて。味の表現って難しいですよね。特に私は感覚的に味わいを察知しているために言葉にするのが難しく、メールを打っている今も、どう表現してよいのか悩みながら進めております。私自身、味を血液型や干支、星座に当てはめて捉える節があります。これは、あくまでも私だけの感覚で、勿論どれが良い悪いでもなければ、実際の人の血液型に関連するものでもなく、本当に感覚でして…ご容赦いただければと思います。例えば、世の中にあるキャビアの大多数を、B型RH+と捉えています。しかし私が惚れ、これぞと思っているキャビアはそれには当てはまりません。自身が好きなバエリはO型RH-、オシェトラはA型RH-、ベルーガはAB型のRH-だと思っています。マダムの商品として提供するものは、これらの要素を感じるか否かを一つの指標としキャビアを選んでいます。ですが生ものの為、その要素は一時的なものです。空気に触れ、時間とともに、どんなキャビアもB型RH+に向かって走っていきます。止められません。そして、様々な環境因子があるゆえコントロールは非常に困難です。けど、私がおいしいと思っているものは、そういうものです。それを表現できないのであれば、わざわざ私がやる意味はないと思っています。そして、ペアリングや、マリアージュに対しても思うところがございます。ペアリングは、「同じ血液型同士の同調」。マリアージュは、「異なる血液型が交わったときの化学変化や相乗効果」だと思っています。世間の方々が、これらの言葉をどう認識し常用されているのかはわかりませんが、私はそのように捉えています。少しわかりやすくするため、あえて人で例えると、B型のRH+同士、どこか互いの意図することが解る感覚を、「ペアリング」。とあるAB型RH+とO型RH-が偶然出会い、なぜか魅かれる・心地がいい・自然と呼吸が合う、というような感覚を、「マリアージュ」だと思っています。私は、後者のマリアージュが好きです。……と言いましても、それはとても稀有なことで、奇跡に近いめぐり逢わせだと思います。でも、だからこそ探す意味があり、私は人生を通して様々なマリアージュを味わいたいと考えています。そのような視点から見ますと、ご提案いただいたお酒とオシェトラは、「ペアリング」だった印象です。浅学菲才の身でありながら大変おこがましいことを申し上げすみません。星野さんがおっしゃる通りハマっています。アリです。アリなのですが、……オシェトラの良い部分が引き出されているという感覚にはならず、求めている化学変化や互いを高めあっている様子は感じませんでした…。じゃあ、バエリはどうなのだ?そこまでなのか?というところですが、私はこれらの組み合わせに、他とは違う何か惹かれあうものを感じています。キャビアのコンディションや温度、その他の様々な要因が調和したとき、ビッグバンが起こる可能性はあると感じています。…それが何かはわからないのですが…。すみません。星野さんの「フィニッシュの長さが合う」のような、一撃で周囲を納得させられるかっこいい言語化能力が本当に羨ましいです!・・・前半でお伝えした通り、どんなキャビアもB型RH+へ向かって走っています。冷蔵庫の中で、今も。元々の卵のポテンシャルや、経過の速度は缶毎に異なります。抜栓するまで全くわからず、知る術は皆無です。現状、でき得る限りは尽くしておりますので、経験上はバエリでいけると踏んでおります。が、もしオシェトラになってしまう場合は、【tsuchida12】で、いかせてください。理由は、『夏らしく爽やかな後味を演出するならこっちかな、という“イメージ”』。もしもの場合は、キャビア×日本酒×8月下旬、のイメージでやらせてください。 上記が、感想として私が星野さん宛てにお送りしたメールです。そして後日、このメールに返信が来ます。 松居さん相変わらずアツイ人だな〜と感激です!益々楽しみになっています。 お願いをしておきながら断る私に対して、『アツい』と言ってくださる星野さんは、聖人か何かなのでしょうか。メールに対し自然と頭が下がり、星野さんの懐の深さに目頭がぐっと熱くなったのを覚えています。 月日は流れ、8月中旬。お盆が過ぎた頃に、【バエリでいける】と確信。当初の予定通り、バエリ×プリンセスサリー、そして、お酒の違いもお楽しみいただけるよう、tsuchida12をラインナップに加え、イベントへと進んでまいります。 本日も、最後までお付き合いくださり誠にありがとうございました。「キャビア×日本酒=マリアージュするのか。」は次回で完結いたします。最終話も見届けていただけますと、嬉しく存じます。それでは、また次回。 ↑星野さんのテイスティング風景↓松居のテイスティング風景

キャビア×日本酒=マリアージュするのか。⑤

皆様、こんにちは。 前回に引き続き、2026年8月に行いました、キャビアと日本酒のテイスティングイベントについて記しております。今回は、イベント準備中に起こったトラブルから、【マリアージュについて】思わぬ議論ができた件を中心に書いてまいりたいと思います。 イベント準備期間中、私の肝を随分と冷やしてくれたトラブルが発生しておりました。 私たちマダムスタージャンキャビアは、いわばキャビアのセレクトショップです。自社で養殖場を持っているわけではなく、特定のキャビアブランドの代理店でもありません。私自身が、これまで食べてきた世界中のキャビアの中から、自信を持っておすすめできる養殖場のキャビアを仕入れております。 その選定基準は以下の通りです。▪︎チョウザメたちの生活環境を大切に考えていること▪︎不自然な養殖方法を用いず、「Natural」であること▪︎作り手たちの人柄▪︎環境に与える負荷に対して真摯に取り組んでいることそして、一番大事に考えている基準が、もし自分が来世で養殖のチョウザメとして生を授かった場合でも、「どうせなら、ここで暮らしたい」「ここでなら住んでも構わない」と自分事として納得ができる養殖場のものしか推さない・扱わないと、心に決めています。それらの条件をクリアした養殖場から届いたキャビアを都度テイスティングし、最もおいしい状態でお客様にお届けしています。 そんな”替えのきかない”キャビアに、届かないというアクシデントが発生したのです。 お取引をしているポーランドの養殖場は、人にも動物にも環境にもWelfareを大事に考えていらっしゃいます。その取り組みの一つとして、サマーバケーションが設けられています。と言いつつも、チョウザメたちのお世話は毎日必要ですので、それらを除く業務が毎年7月~9月の間お休みとなります。それに備え予め注文をするのですが、休み期間を目前に現地から届いた連絡に言葉を失います。その内容は、『注文量が多くて、要望分のバエリが用意できなかった。ごめんね。代わりにオシェトラにしておいたから許して』 ・・・・・・・・ 今回のイベントはそもそも、「土田酒造のプリンセスサリー×マダムのバエリとのマリアージュを味わっていただきたい!」という思いからはじまっております。にもかかわらず、主役のバエリが届かないという、私にとっては頭が真っ白になるような一大事でした。おまけにちょうどその頃、イベント情報を公開したばかりでしたので、引くに引けない状況の中、「どうする?中止か?延期か?」と、嫌な汗が頬をつたう事態でした。 バエリが提供できるよう、でき得る策を順に講じながら、万が一に備え、プランBの検討が急務でした。星野さんに事情を話し、代替案として「オシェトラに合う土田のお酒を見つけてほしい」と無茶なお願いをし、力をお借りすることに。すぐさまオシェトラをお送りし、待つこと数日。候補となるお酒を2つ選んで連絡をくださいました。そのときのメールがこちらです。 お世話になります。土田酒造の星野です。さて、昨夜やっと酒との相性確認を実施できました。相変わらず上質な味わいで、本当に素晴らしい品物だなと感激しました。お酒は当日を想定してワイングラスのようなタイプのグラス(ピッコロ)で、冷やしたもので合わせました。結果、私の推しは[木桶壌]か[tsuchida12]でした。どっちか一つ、なら木桶壌です。[木桶壌]土田では上位クラスの酒で、群馬県産の自然栽培米を90%精米とし、川場村の杉の木で作った木桶にて、酵母無添加の木桶で仕込むという唯一無二の味わいの酒です。この酒の風格とオシェトラの持つ風格が似ている様に感じました。熟成の具合、甘味、酸味、旨味のバランスも良く、オシェトラの余韻とも合う感じがしました。この酒は木桶仕込みであり、木桶由来の苦味や渋味を感じるのですが、冷やすとやや際立ちます。このビターな味わいが後引くフィニッシュとなるイメージでの合い方でした。個人的に苦味や渋味は大人の味覚としてとても大切に考えていますが、これが見事にハマった感じがしていて、個人的にはイチオシです。[tsuchida12]原酒で12%台の甘酸っぱい系の定番商品です。白麹を使う事でクエン酸を酒に乗せ、そこに米の甘さと旨みを引き出す事でボディ感を作っています。このボディの厚さがオシェトラの持つ塩味や味わいの幅とよく合うイメージを持ちました。余韻もいい具合に合っていると感じました。白麹が持つクエン酸は「冷やした方が美味しいと感じる酸」ですので、今回の冷やして提供する前提にはバッチリかなと思います。夏らしく爽やかな後味を演出するならこっちかな、というイメージです。話はずれますが、少し気になる点がありました。R6BYのプリンセスサリーも合わせたのですが、酒の熟成の香りがオシェトラを追い越している感じで酒の方が強く感じました(美味しいの範囲内ではあります)。今までバエリにはプリンセスサリーだと思っていましたが、オシェトラよりも強く感じた酒を、オシェトラよりも余韻の短いバエリに合わせるのは少しズレてしまうのではないかと思いました。酒もキャビアも余計な物を使わない製法であり、当然変化する前提であり、常に同じ条件ではありませんので、この辺りは一度確認しておいた方が良いかもしれないですね。 すぐ様、土田酒造のHPで2つを購入。到着を待ち、キャビアと合わせテイスティングを行いました。 お世話になっております。マダムスタージャンキャビアの松居です。星野さんのレビューに毎回感銘を受けております。表現が正確で、読んでいてとても心地が良くて…お忙しいところ、本当に有難うございます。さて。味の表現って難しいですよね。特に私は感覚的に味わいを察知しているために言葉にするのが難しく、メールを打っている今も、どう表現してよいのか悩みながら進めております。私自身、味を血液型や干支、星座に当てはめて捉える節があります。これは、あくまでも私だけの感覚で、勿論どれが良い悪いでもなければ、実際の人の血液型に関連するものでもなく、本当に感覚でして…ご容赦いただければと思います。例えば、世の中にあるキャビアの大多数を、B型RH+と捉えています。しかし私が惚れ、これぞと思っているキャビアはそれには当てはまりません。自身が好きなバエリはO型RH-、オシェトラはA型RH-、ベルーガはAB型のRH-だと思っています。マダムの商品として提供するものは、これらの要素を感じるか否かを一つの指標としキャビアを選んでいます。ですが生ものの為、その要素は一時的なものです。空気に触れ、時間とともに、どんなキャビアもB型RH+に向かって走っていきます。止められません。そして、様々な環境因子があるゆえコントロールは非常に困難です。けど、私がおいしいと思っているものは、そういうものです。それを表現できないのであれば、わざわざ私がやる意味はないと思っています。そして、ペアリングや、マリアージュに対しても思うところがございます。ペアリングは、「同じ血液型同士の同調」。マリアージュは、「異なる血液型が交わったときの化学変化や相乗効果」だと思っています。世間の方々が、これらの言葉をどう認識し常用されているのかはわかりませんが、私はそのように捉えています。少しわかりやすくするため、あえて人で例えると、B型のRH+同士、どこか互いの意図することが解る感覚を、「ペアリング」。とあるAB型RH+とO型RH-が偶然出会い、なぜか魅かれる・心地がいい・自然と呼吸が合う、というような感覚を、「マリアージュ」だと思っています。私は、後者のマリアージュが好きです。……と言いましても、それはとても稀有なことで、奇跡に近いめぐり逢わせだと思います。でも、だからこそ探す意味があり、私は人生を通して様々なマリアージュを味わいたいと考えています。そのような視点から見ますと、ご提案いただいたお酒とオシェトラは、「ペアリング」だった印象です。浅学菲才の身でありながら大変おこがましいことを申し上げすみません。星野さんがおっしゃる通りハマっています。アリです。アリなのですが、……オシェトラの良い部分が引き出されているという感覚にはならず、求めている化学変化や互いを高めあっている様子は感じませんでした…。じゃあ、バエリはどうなのだ?そこまでなのか?というところですが、私はこれらの組み合わせに、他とは違う何か惹かれあうものを感じています。キャビアのコンディションや温度、その他の様々な要因が調和したとき、ビッグバンが起こる可能性はあると感じています。…それが何かはわからないのですが…。すみません。星野さんの「フィニッシュの長さが合う」のような、一撃で周囲を納得させられるかっこいい言語化能力が本当に羨ましいです!・・・前半でお伝えした通り、どんなキャビアもB型RH+へ向かって走っています。冷蔵庫の中で、今も。元々の卵のポテンシャルや、経過の速度は缶毎に異なります。抜栓するまで全くわからず、知る術は皆無です。現状、でき得る限りは尽くしておりますので、経験上はバエリでいけると踏んでおります。が、もしオシェトラになってしまう場合は、【tsuchida12】で、いかせてください。理由は、『夏らしく爽やかな後味を演出するならこっちかな、という“イメージ”』。もしもの場合は、キャビア×日本酒×8月下旬、のイメージでやらせてください。 上記が、感想として私が星野さん宛てにお送りしたメールです。そして後日、このメールに返信が来ます。 松居さん相変わらずアツイ人だな〜と感激です!益々楽しみになっています。 お願いをしておきながら断る私に対して、『アツい』と言ってくださる星野さんは、聖人か何かなのでしょうか。メールに対し自然と頭が下がり、星野さんの懐の深さに目頭がぐっと熱くなったのを覚えています。 月日は流れ、8月中旬。お盆が過ぎた頃に、【バエリでいける】と確信。当初の予定通り、バエリ×プリンセスサリー、そして、お酒の違いもお楽しみいただけるよう、tsuchida12をラインナップに加え、イベントへと進んでまいります。 本日も、最後までお付き合いくださり誠にありがとうございました。「キャビア×日本酒=マリアージュするのか。」は次回で完結いたします。最終話も見届けていただけますと、嬉しく存じます。それでは、また次回。 ↑星野さんのテイスティング風景↓松居のテイスティング風景

キャビア×日本酒=マリアージュするのか。④

皆さま、こんにちは。前回につづき、2026年8月に行いました、キャビアと日本酒のテイスティングイベントについて記しております。今日は、イベントの実現に至るまでの想いについてを書いてまいります。       テーマは、「Natural」   イベントタイトルは、すぐに決まりました。生態系により近い豊かな環境で育てられたチョウザメたちからいただいた卵を、塩だけで仕上げるフレッシュキャビアを提供する私たちマダムスタージャンキャビアと、米・麹・水と菌の力だけで、添加物を一切使わずにお酒を造る土田酒造。互いの共通点である「Natural(自然のままのあり方)」は、満場一致の決定でした。 そして、Naturalに込めた想いは、実はこれだけではありませんでした。 昨今キャビアを取り巻く環境は、“不自然”が多く目につくようになりました。産地偽装や誇大広告、言葉の綾を用いた販売表現、売り手に都合のよい加工、「卵を抱かないオスは不要」と稚魚にホルモンを与え性転換、「粒が大きい方が映える」「色は均一な方が使いやすい」の声を拾い、粒肥大化、色均一化に着手……書いているだけでもげんなりしてきます、、、ですが、そのような造られたキャビアも、同じ【キャビア】として提供されています。 古代から現代にいたるまで、多くのフーディーたちを魅了してきた世界三大珍味【キャビア】は、決してそのようなものではありません。 ですが、新規参入が相次ぎキャビアを知らない人たちが多く携わることで、キャビアのあり方は大きく変わりました。 そしてこれから、それらに拍車をかけていくもののひとつは、AIだと私は思っています。これまで、どこか神秘的食材として扱われてきたために、正確な情報はインターネットに出回っておりません。キャビアを知らない人たちが、曖昧な情報の一部分を切り取り、自由な解釈のもと広まった情報が点在している中、AIによる収集がなされています。現に各社のAIに、キャビアについて尋ねてみても、誤った情報やアップデートが必要な内容が非常に多いです。あまりの多さに心が病む思いです。 キャビアの本当の姿は、検索画面やAIの答えの中にはありません。 だからこそ、「自分の五感で体感する」ことこそが必要であると考えました。実際に目にして、香りを感じ、質感に触れて、食べ自分の舌で味わう。 先日投稿した、「私と、ウォーホル」でも書きましたが、キャビアは他者の評価が採用されていることがとても多いです。ネットの情報や誰かの評価を借りるのではなく、自分の五感でキャビアのおいしさを決めてほしい。当たり前のようで、当たり前ではなくなってしまっている、そんな、選択の主導権が自分にある「Natural」な選択をしてほしいという、私たちからのメッセージを含んだタイトルでもありました。 実は今回、イベントを前に星野さんにアンケートを行いました。"キャビア×日本酒"という、少し身構えてしまう非日常体験のため、「どんな人がやっているんだろう?」と不安に感じられる方も、きっと、多くいらっしゃるだろうな。私たちが日々、どのような思いでお酒やキャビアに向き合っているのか、その手触りのようなものを事前にご紹介出来れば、足をお運びいただく間の不安を、少しでも安心に変えられたらいいなと考え、文字にしました。 その中から、ひとつご紹介いたします。 Q:星野さんの日本酒に対する思いと、松居のキャビアに対する思いの共通点を教えてください。A:一番はっきりしている共通点は、「余計なものを足さず、自然のままに仕上げる」という姿勢です。土田は米・麹・水と、菌の力だけで、添加物を一切使わずに酒を造る。松居さんのキャビアも、チョウザメの卵と塩だけ、防腐剤を使わず加熱も冷凍もしない。素材と自然の力を信じて、手を入れすぎない——今回のイベントのテーマ「Natural」は、まさにこの重なりから来ていると思います。調べれば何でも分かり、"それなりに良いもの"なら誰でも手に入る時代だからこそ、借り物の評価ではなく、自分の舌で本当の良さを確かめてほしい。私たちが「情報も技術も行き渡った時代に、どう中身で勝負するか」を考えているのと、松居さんが「自分の五感でキャビアのおいしさを決めてほしい」と願うのは、根っこが同じだと感じます。 少しそれますが…星野さんに対し、自己紹介を含む全6問のアンケートをお願いしたのですが、すべてにこの熱量でご回答くださいまして…メールを開きまず目にした、この文字量。その瞬間に涙腺崩壊。なんて真摯に対応くださるのかと考えたら、どんどん、どんどん涙があふれ、自分の涙でパソコンの画面が見えず……涙と涙の合間でぼやけながら見える言葉に、肩を揺らしながら泣きました。ひとしきり泣き、呼吸をととのえ、再び読み直し…本当に良い仲間に出会えたことを、心から感謝した瞬間でした。 ……戻ります。 イベントには、もう一つサブタイトルをつけておりました。 ~嗜み方を知る大人はかっこいい~ 少々偉そうではありますが、これは私自身のスローガンでもございます。"かっこいい大人になりたい" 私にとってかっこいいとは、自らの感性と美意識で選択ができ、そのものの持つ背景に優しく敬意を払える人のことです。キャビアを通して、食のあり方や、尊い命をいただくことの意味にそっと想いを巡らせる——それこそが、「嗜み」であると、私たちは考えております。 ………と、綺麗な言葉を並べましたが、単純に、そんな大人ってカッコいいな~!!!そんな風になりたいなー!そして、そんな食体験の時間を提供できたら、それもまたカッコいいなーー!!と、実現に向け始動。毎日奮闘しておりました。 折角なので、イベントページのURLを載せておきます。ページ下部には、星野さんからいただいた他の問いへの回答もございます。サリーとバエリに関して、お酒の設計図を担われているプロならではの興味深い視点も含まれておりますので、よろしければ併せてお読みいただけますと嬉しく存じます。 満月の日に、五感を研ぎ澄ます特別なおもてなし。キャビアと日本酒の一日限りのプレミアムテイスティング 【日時】2026年8月28日㈮ 今回は、直接的な、「キャビア×日本酒=マリアージュするのか。」の内容とは少しそれて記してまいりましたが、次回は味わいについて議論を交わす出来事がございましたので、私たちの考える【マリアージュとは】について書き記していきたいと思います。 最後までお付き合いくださりありがとうございました。では、また次の機会に。

キャビア×日本酒=マリアージュするのか。④

皆さま、こんにちは。前回につづき、2026年8月に行いました、キャビアと日本酒のテイスティングイベントについて記しております。今日は、イベントの実現に至るまでの想いについてを書いてまいります。       テーマは、「Natural」   イベントタイトルは、すぐに決まりました。生態系により近い豊かな環境で育てられたチョウザメたちからいただいた卵を、塩だけで仕上げるフレッシュキャビアを提供する私たちマダムスタージャンキャビアと、米・麹・水と菌の力だけで、添加物を一切使わずにお酒を造る土田酒造。互いの共通点である「Natural(自然のままのあり方)」は、満場一致の決定でした。 そして、Naturalに込めた想いは、実はこれだけではありませんでした。 昨今キャビアを取り巻く環境は、“不自然”が多く目につくようになりました。産地偽装や誇大広告、言葉の綾を用いた販売表現、売り手に都合のよい加工、「卵を抱かないオスは不要」と稚魚にホルモンを与え性転換、「粒が大きい方が映える」「色は均一な方が使いやすい」の声を拾い、粒肥大化、色均一化に着手……書いているだけでもげんなりしてきます、、、ですが、そのような造られたキャビアも、同じ【キャビア】として提供されています。 古代から現代にいたるまで、多くのフーディーたちを魅了してきた世界三大珍味【キャビア】は、決してそのようなものではありません。 ですが、新規参入が相次ぎキャビアを知らない人たちが多く携わることで、キャビアのあり方は大きく変わりました。 そしてこれから、それらに拍車をかけていくもののひとつは、AIだと私は思っています。これまで、どこか神秘的食材として扱われてきたために、正確な情報はインターネットに出回っておりません。キャビアを知らない人たちが、曖昧な情報の一部分を切り取り、自由な解釈のもと広まった情報が点在している中、AIによる収集がなされています。現に各社のAIに、キャビアについて尋ねてみても、誤った情報やアップデートが必要な内容が非常に多いです。あまりの多さに心が病む思いです。 キャビアの本当の姿は、検索画面やAIの答えの中にはありません。 だからこそ、「自分の五感で体感する」ことこそが必要であると考えました。実際に目にして、香りを感じ、質感に触れて、食べ自分の舌で味わう。 先日投稿した、「私と、ウォーホル」でも書きましたが、キャビアは他者の評価が採用されていることがとても多いです。ネットの情報や誰かの評価を借りるのではなく、自分の五感でキャビアのおいしさを決めてほしい。当たり前のようで、当たり前ではなくなってしまっている、そんな、選択の主導権が自分にある「Natural」な選択をしてほしいという、私たちからのメッセージを含んだタイトルでもありました。 実は今回、イベントを前に星野さんにアンケートを行いました。"キャビア×日本酒"という、少し身構えてしまう非日常体験のため、「どんな人がやっているんだろう?」と不安に感じられる方も、きっと、多くいらっしゃるだろうな。私たちが日々、どのような思いでお酒やキャビアに向き合っているのか、その手触りのようなものを事前にご紹介出来れば、足をお運びいただく間の不安を、少しでも安心に変えられたらいいなと考え、文字にしました。 その中から、ひとつご紹介いたします。 Q:星野さんの日本酒に対する思いと、松居のキャビアに対する思いの共通点を教えてください。A:一番はっきりしている共通点は、「余計なものを足さず、自然のままに仕上げる」という姿勢です。土田は米・麹・水と、菌の力だけで、添加物を一切使わずに酒を造る。松居さんのキャビアも、チョウザメの卵と塩だけ、防腐剤を使わず加熱も冷凍もしない。素材と自然の力を信じて、手を入れすぎない——今回のイベントのテーマ「Natural」は、まさにこの重なりから来ていると思います。調べれば何でも分かり、"それなりに良いもの"なら誰でも手に入る時代だからこそ、借り物の評価ではなく、自分の舌で本当の良さを確かめてほしい。私たちが「情報も技術も行き渡った時代に、どう中身で勝負するか」を考えているのと、松居さんが「自分の五感でキャビアのおいしさを決めてほしい」と願うのは、根っこが同じだと感じます。 少しそれますが…星野さんに対し、自己紹介を含む全6問のアンケートをお願いしたのですが、すべてにこの熱量でご回答くださいまして…メールを開きまず目にした、この文字量。その瞬間に涙腺崩壊。なんて真摯に対応くださるのかと考えたら、どんどん、どんどん涙があふれ、自分の涙でパソコンの画面が見えず……涙と涙の合間でぼやけながら見える言葉に、肩を揺らしながら泣きました。ひとしきり泣き、呼吸をととのえ、再び読み直し…本当に良い仲間に出会えたことを、心から感謝した瞬間でした。 ……戻ります。 イベントには、もう一つサブタイトルをつけておりました。 ~嗜み方を知る大人はかっこいい~ 少々偉そうではありますが、これは私自身のスローガンでもございます。"かっこいい大人になりたい" 私にとってかっこいいとは、自らの感性と美意識で選択ができ、そのものの持つ背景に優しく敬意を払える人のことです。キャビアを通して、食のあり方や、尊い命をいただくことの意味にそっと想いを巡らせる——それこそが、「嗜み」であると、私たちは考えております。 ………と、綺麗な言葉を並べましたが、単純に、そんな大人ってカッコいいな~!!!そんな風になりたいなー!そして、そんな食体験の時間を提供できたら、それもまたカッコいいなーー!!と、実現に向け始動。毎日奮闘しておりました。 折角なので、イベントページのURLを載せておきます。ページ下部には、星野さんからいただいた他の問いへの回答もございます。サリーとバエリに関して、お酒の設計図を担われているプロならではの興味深い視点も含まれておりますので、よろしければ併せてお読みいただけますと嬉しく存じます。 満月の日に、五感を研ぎ澄ます特別なおもてなし。キャビアと日本酒の一日限りのプレミアムテイスティング 【日時】2026年8月28日㈮ 今回は、直接的な、「キャビア×日本酒=マリアージュするのか。」の内容とは少しそれて記してまいりましたが、次回は味わいについて議論を交わす出来事がございましたので、私たちの考える【マリアージュとは】について書き記していきたいと思います。 最後までお付き合いくださりありがとうございました。では、また次の機会に。

キャビア×日本酒=マリアージュするのか。③

イベント参加へのお誘い 蔵を訪問して以降はというと、土田酒造さんが出展されているイベントにお客さんとしてお邪魔をしたり、食事にお誘いしたりと、年に1~2回お会いする仲でありました。昨年食事をご一緒した際に、イベントをしたいと思っている旨をお伝えしたところ、良い反応をいただけていたので、実現を目指して2026年をスタートいたしました。幾つもの検討を重ね、具体的なイベントの内容を定め、ようやくお誘いをできたのが、4月の末。 翌日に前向きなお返事を頂戴し、翌々日には正式な承諾をいただきました。馴染みは築けていたものの、私たちからの申し出を、いいねと受け入れてくださる、星野さんと土田酒造の懐の深さに、ただただ頭の下がる思いでした。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。 数年前のあの日に覚えたバエリとプリンセスサリーの感覚を、やっと振る舞える日が来るのかと思うと感慨深く早くも感極まっていた、首夏を望む、春の晦日でした。 写真は、2025年春。星野さんをお誘いし、チョウザメの身と土田のお酒をいただいたときのものです。

キャビア×日本酒=マリアージュするのか。③

イベント参加へのお誘い 蔵を訪問して以降はというと、土田酒造さんが出展されているイベントにお客さんとしてお邪魔をしたり、食事にお誘いしたりと、年に1~2回お会いする仲でありました。昨年食事をご一緒した際に、イベントをしたいと思っている旨をお伝えしたところ、良い反応をいただけていたので、実現を目指して2026年をスタートいたしました。幾つもの検討を重ね、具体的なイベントの内容を定め、ようやくお誘いをできたのが、4月の末。 翌日に前向きなお返事を頂戴し、翌々日には正式な承諾をいただきました。馴染みは築けていたものの、私たちからの申し出を、いいねと受け入れてくださる、星野さんと土田酒造の懐の深さに、ただただ頭の下がる思いでした。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。 数年前のあの日に覚えたバエリとプリンセスサリーの感覚を、やっと振る舞える日が来るのかと思うと感慨深く早くも感極まっていた、首夏を望む、春の晦日でした。 写真は、2025年春。星野さんをお誘いし、チョウザメの身と土田のお酒をいただいたときのものです。

キャビア×日本酒=マリアージュするのか。②

蔵訪問 お出会いしてから、約2ヶ月後。いよいよ訪問の日。新幹線に乗り、レンタカーを借りて山を越え、自然の豊かさが溢れる群馬県みなかみ町を訪ねました。これまた緊張しながら伺いましたが、”ようこそお越しくださいました”と温かくお迎えくださり、蔵の見学がスタート。包み隠すことなく、本当に隅々まで見せ案内してくださいました。 話をしていると、添加物や、業界のルール、抱える闇や課題が、キャビアと通ずる点がとても多く、「同じ問題に立ち向かっている人がいる…!」と、同士を見つけたように感じ、話の途中に嬉しくて涙を流したのを覚えています。見学が終わる頃には、星野さん、ならびに土田酒造のファンになっていました。 最後に、持参していたマダムのキャビアベルーガ・オシェトラ・バエリ全種類をお渡しし、「これから貴蔵のプリンセスサリーとバエリが合うことを、多くの方にご紹介していくためには、御社の御許しをいただかねばなりません。なので、食べてほしいです…!」と託して帰りました。 数日後、驚くほど長い文章のメールをくださり、それぞれのキャビアの感想とそれぞれに合うお酒の紹介、そしてなぜ合うのか理由まで細かに記してお送りくださいました。それはそれは…もう感動で、星野さんの真摯さに、声をあげて泣きながらメールを読みました。 その理由は、ただ嬉しかったからだけではないんです。これ程までにキャビアに対して的確な感想をいただいけたのは、星野さんが、"2人目"だったからです。 私はキャビア専門輸入卸の現場を経て、ブランドを立ち上げました。毎日何十軒もの高級飲食店を回り、何百人もの料理人に会ってきました。その中には、星を獲得されているお店もあれば、著名なシェフもたくさんいらっしゃいます。ですが、私たちに対し、面と向かってキャビアの感想をおっしゃられる方は、ほぼいらっしゃいませんでした。 日常的にキャビアを扱っていらっしゃる方々とはいえ、キャビアの知識や経験が豊富にあられるわけではありません。ハイブランドのスタッフが、普段からハイブランドを身に付けているわけではないのと一緒です。例えをあげるなら、私の父は18才から約20年間、大手ホテルのフレンチの現場で働いていました。その間にキャビアを食べた経験は、『小指の爪ほどの量を、わずか数回だけだった』と話してくれたことがあります。今も昔も、キャビアは高級食材です。仕入れをするのは、お客様に提供をするため。従業員のために毎度多く仕入れ、”食べて勉強しろ”だなんて、稀有も稀有です。専門家を前に、間違ったことを言っていたらどうしよう、と気がひけてしまうのもわかります。でも当時の私は、リアクションが返ってこないことをとても悲しく思っていました… その頃にたった一人、的確な感想を伝えてくださったのは、銀座ラフィナージュのシェフ、高良康之さんです。ご存知の方も多くいらっしゃることでしょう。日本のフランス料理界を代表する名シェフのお一人です。キャビアのテイスティングをされている時も、その鋭い嗅覚と敏感な味覚に神々しささえ感じました。 そこから、ようやく現れた二人目が、星野元希さんです。嬉しかった~、本当に嬉しかった。 いただいたメールを読みながら、「あ~、マリアージュを探していたのは、この人に出逢うためでもあったんだ…!」と腑に落ちた日でした。そんな彼と出会えたことを、本当に嬉しく思っています。とても素敵な方です。土田酒造のお酒も勿論なのですが、「星野さん」を皆様におすすめしたいくらいなんです。

キャビア×日本酒=マリアージュするのか。②

蔵訪問 お出会いしてから、約2ヶ月後。いよいよ訪問の日。新幹線に乗り、レンタカーを借りて山を越え、自然の豊かさが溢れる群馬県みなかみ町を訪ねました。これまた緊張しながら伺いましたが、”ようこそお越しくださいました”と温かくお迎えくださり、蔵の見学がスタート。包み隠すことなく、本当に隅々まで見せ案内してくださいました。 話をしていると、添加物や、業界のルール、抱える闇や課題が、キャビアと通ずる点がとても多く、「同じ問題に立ち向かっている人がいる…!」と、同士を見つけたように感じ、話の途中に嬉しくて涙を流したのを覚えています。見学が終わる頃には、星野さん、ならびに土田酒造のファンになっていました。 最後に、持参していたマダムのキャビアベルーガ・オシェトラ・バエリ全種類をお渡しし、「これから貴蔵のプリンセスサリーとバエリが合うことを、多くの方にご紹介していくためには、御社の御許しをいただかねばなりません。なので、食べてほしいです…!」と託して帰りました。 数日後、驚くほど長い文章のメールをくださり、それぞれのキャビアの感想とそれぞれに合うお酒の紹介、そしてなぜ合うのか理由まで細かに記してお送りくださいました。それはそれは…もう感動で、星野さんの真摯さに、声をあげて泣きながらメールを読みました。 その理由は、ただ嬉しかったからだけではないんです。これ程までにキャビアに対して的確な感想をいただいけたのは、星野さんが、"2人目"だったからです。 私はキャビア専門輸入卸の現場を経て、ブランドを立ち上げました。毎日何十軒もの高級飲食店を回り、何百人もの料理人に会ってきました。その中には、星を獲得されているお店もあれば、著名なシェフもたくさんいらっしゃいます。ですが、私たちに対し、面と向かってキャビアの感想をおっしゃられる方は、ほぼいらっしゃいませんでした。 日常的にキャビアを扱っていらっしゃる方々とはいえ、キャビアの知識や経験が豊富にあられるわけではありません。ハイブランドのスタッフが、普段からハイブランドを身に付けているわけではないのと一緒です。例えをあげるなら、私の父は18才から約20年間、大手ホテルのフレンチの現場で働いていました。その間にキャビアを食べた経験は、『小指の爪ほどの量を、わずか数回だけだった』と話してくれたことがあります。今も昔も、キャビアは高級食材です。仕入れをするのは、お客様に提供をするため。従業員のために毎度多く仕入れ、”食べて勉強しろ”だなんて、稀有も稀有です。専門家を前に、間違ったことを言っていたらどうしよう、と気がひけてしまうのもわかります。でも当時の私は、リアクションが返ってこないことをとても悲しく思っていました… その頃にたった一人、的確な感想を伝えてくださったのは、銀座ラフィナージュのシェフ、高良康之さんです。ご存知の方も多くいらっしゃることでしょう。日本のフランス料理界を代表する名シェフのお一人です。キャビアのテイスティングをされている時も、その鋭い嗅覚と敏感な味覚に神々しささえ感じました。 そこから、ようやく現れた二人目が、星野元希さんです。嬉しかった~、本当に嬉しかった。 いただいたメールを読みながら、「あ~、マリアージュを探していたのは、この人に出逢うためでもあったんだ…!」と腑に落ちた日でした。そんな彼と出会えたことを、本当に嬉しく思っています。とても素敵な方です。土田酒造のお酒も勿論なのですが、「星野さん」を皆様におすすめしたいくらいなんです。

キャビア×日本酒=マリアージュするのか。①

どうも、皆様こんにちは。いかがお過ごしでいらっしゃいますでしょう。 私たちは、2026年8月の末にキャビアと日本酒のテイスティングイベントを行いました。そこでは語り切れなかった思いや、キャビアと日本酒の出会い、イベントの実現に至るまで、そして「これから」についてを、書き記したいと思います。 ではまず、 【なぜ、日本酒だったのか】をお話ししてまいりたいと思います。 キャビアと言えば、「シャンパン」。 これは世界共通認識です。どこの国に行っても、どこのレストランに行っても、口を揃えて皆がそう言います。でも…感動をしたことがないんです。キャビアとシャンパンの組み合わせに。雰囲気はとても素敵ですが、味わいは互いの良さを引き立たせあうようなものではなく、一方の良さを打ち消してしまっているものや、決してポジティブではない酸味を引き出してしまっているものが多い、と私は思っています。 私は年間300日近くキャビアを食べて生活しています。国内外問わず様々なシーンと場所で、キャビアとシャンパンを食してきました。世界中の人たちが、「キャビア=シャンパン」だというのであれば、一度くらい感動する組み合わせに出会っていてもよいのではないかと思うほど経験していると思っています。ですが、未だマリアージュを感じたことは一度もありません。 とは言え、答えを持たずにはいられません。なぜならキャビア屋が最も多くされる質問は、『キャビアって、何のお酒に合いますか?』なのです。 私たちマダムスタージャンキャビアは、ご自宅でのお食事や、贈りものの品として、キャビアの販売をしておりますので、ご提案するものは、高級レストランの料理人にしか作れない・扱えないようなものではなく、だれでも簡単にできる・買える、再現性のある組み合わせであることが大事だと考えています。そして何より、【良いキャビアは単体で食べてこそおいしいんです】なので素材の良さが伝わるようシンプルな組み合わせであることをモットーに日々探求しております。その追求を最も活発に行っていたのが、ブランド立ち上げ時でした。私たちの愛すべき商品ですから、皆様においしいと言っていただけるよう、「このキャビアには、これを」「このキャビアには、これを」といったように、それぞれの特徴が活きる組み合わせを必死に探していました。シャンパンに始まり、ワイン、日本酒、泡盛まで。キャビアとのペアリングを試せそうな試飲会やイベント、飲食店を体力の限り巡りました。 そんなある日、とあるイベントで、ある出会いをいたします。 都心のビルに囲まれた会場で、全国の約30都道府県から46ほどの酒蔵が一堂に会す日本酒のイベントに、キャビアを持ち参加。各蔵のブースでおすすめの1本と、「魚卵やチーズに合うのはどれですか?」と尋ね、紹介されたもう1本の計2種をいただき、都度会場の外まで移動し、キャビアと合わせ実食。それを2日間かけ、実施。既に合わせたことがある蔵などを除いて、ほとんどの蔵のお酒と試しました。その中から、”これは...!”と思った蔵に、声をかけ、名刺とパンフレットを渡し、事情を話し、アプローチ。数ある日本酒の中から自身の心が最も動いたのが、土田酒造の「プリンセスサリー」でした。あの時の光景を今も鮮明に覚えています。緊張とアルコールが相まって心臓はもう、ドっキドキ。杜氏の「星野さん」にお声をかけ、指先を震わせながら言葉噛み噛みで名乗りました。後日、いただいた連絡先にメールを送り、蔵に見学に行く約束をいたします。 キャビアと日本酒いえ、これが「マダムのバエリ」と、「土田のサリー」の出逢いでした。

キャビア×日本酒=マリアージュするのか。①

どうも、皆様こんにちは。いかがお過ごしでいらっしゃいますでしょう。 私たちは、2026年8月の末にキャビアと日本酒のテイスティングイベントを行いました。そこでは語り切れなかった思いや、キャビアと日本酒の出会い、イベントの実現に至るまで、そして「これから」についてを、書き記したいと思います。 ではまず、 【なぜ、日本酒だったのか】をお話ししてまいりたいと思います。 キャビアと言えば、「シャンパン」。 これは世界共通認識です。どこの国に行っても、どこのレストランに行っても、口を揃えて皆がそう言います。でも…感動をしたことがないんです。キャビアとシャンパンの組み合わせに。雰囲気はとても素敵ですが、味わいは互いの良さを引き立たせあうようなものではなく、一方の良さを打ち消してしまっているものや、決してポジティブではない酸味を引き出してしまっているものが多い、と私は思っています。 私は年間300日近くキャビアを食べて生活しています。国内外問わず様々なシーンと場所で、キャビアとシャンパンを食してきました。世界中の人たちが、「キャビア=シャンパン」だというのであれば、一度くらい感動する組み合わせに出会っていてもよいのではないかと思うほど経験していると思っています。ですが、未だマリアージュを感じたことは一度もありません。 とは言え、答えを持たずにはいられません。なぜならキャビア屋が最も多くされる質問は、『キャビアって、何のお酒に合いますか?』なのです。 私たちマダムスタージャンキャビアは、ご自宅でのお食事や、贈りものの品として、キャビアの販売をしておりますので、ご提案するものは、高級レストランの料理人にしか作れない・扱えないようなものではなく、だれでも簡単にできる・買える、再現性のある組み合わせであることが大事だと考えています。そして何より、【良いキャビアは単体で食べてこそおいしいんです】なので素材の良さが伝わるようシンプルな組み合わせであることをモットーに日々探求しております。その追求を最も活発に行っていたのが、ブランド立ち上げ時でした。私たちの愛すべき商品ですから、皆様においしいと言っていただけるよう、「このキャビアには、これを」「このキャビアには、これを」といったように、それぞれの特徴が活きる組み合わせを必死に探していました。シャンパンに始まり、ワイン、日本酒、泡盛まで。キャビアとのペアリングを試せそうな試飲会やイベント、飲食店を体力の限り巡りました。 そんなある日、とあるイベントで、ある出会いをいたします。 都心のビルに囲まれた会場で、全国の約30都道府県から46ほどの酒蔵が一堂に会す日本酒のイベントに、キャビアを持ち参加。各蔵のブースでおすすめの1本と、「魚卵やチーズに合うのはどれですか?」と尋ね、紹介されたもう1本の計2種をいただき、都度会場の外まで移動し、キャビアと合わせ実食。それを2日間かけ、実施。既に合わせたことがある蔵などを除いて、ほとんどの蔵のお酒と試しました。その中から、”これは...!”と思った蔵に、声をかけ、名刺とパンフレットを渡し、事情を話し、アプローチ。数ある日本酒の中から自身の心が最も動いたのが、土田酒造の「プリンセスサリー」でした。あの時の光景を今も鮮明に覚えています。緊張とアルコールが相まって心臓はもう、ドっキドキ。杜氏の「星野さん」にお声をかけ、指先を震わせながら言葉噛み噛みで名乗りました。後日、いただいた連絡先にメールを送り、蔵に見学に行く約束をいたします。 キャビアと日本酒いえ、これが「マダムのバエリ」と、「土田のサリー」の出逢いでした。

私と、ウォーホル

私には、大事な絵があります。     実家はこじんまりとした、町のフレンチレストランを営んでいました。父がシェフで、母がサービスをして。たしか私が小学校二年生のときに開店したのだと思います。そのお祝いとして、叔母が両親にその絵をプレゼントしてくれました。白いキャンバスに黒いサインペンのようなもので大きなお花が描かれていて、花瓶やお花の一部に、パステルカラーの水色やピンクや黄色の絵の具が塗られていて。輪郭に沿ってきちんと色が塗られているわけではなく、はみ出しているところもあれば、塗りきれていない場所もあって。周囲の風景などはなく、それらだけがキャンバスに描かれている絵。唯一、その絵について父から教わったことは、「めっちゃ高いんやぞ」でした。小学生の私には、とても理解ができませんでした。すごい絵や評価されている絵は、油絵のような色が沢山使われているもので、自然の情景や、まるで人物がそこにいるかのような絵だと思っていたし、教科書に載っているのは大体そういうものでしたし。それとは真逆の絵が評価されていて、高価だなんて。 「この絵の何がいいんだ?私でも描けるぞ」そう思いながら、ずーーーっと見てた。ただただ、ずーーーっと見てた。自分の身長よりも大きな絵だったため、日々いろんな角度から見ていました。引いたり寄ったり見上げたり、椅子にのって真横から見たり、時には寝ころがって見たり。 そして小3か小4の頃、学校の宿題で絵を描かなければいけませんでした。私は絵を描くことが嫌いでした。理由は、「上手に描けないから」。描きたいものもないし、上手く描けるものもないし、どうしたものかと悩んでいたとき、「そうだ、あの絵を真似ればいいんだ!」とひらめいた。画用紙を持って店に行き、とりあえず真似をした。上手くいかない。全然上手に描けない。…おかしい。多分何枚か描きました。それでも全然上手に描けない。そこで気付いた「この絵、……上手だ」。 小学生ながらに、その絵の絶妙なバランスの良さに気付きました。ただ眺めているときにはわからなかった均衡のようなものに触れ、絵の魅力の一端を知った気がしました。しかし、そこからも題材は変えず、絵と同様、中央に花瓶を置き、花を描いた。数本の大きな花ではなく、いっぱいの小さい花を描いて、色を塗った。絵具ではなく、色鉛筆で水色や黄色やピンクにお花を塗った。イマイチだった。上手でも、面白くもない、小学生が描いたって感じのつまらない絵。 そこから何故そうしたかは覚えていないけれど、針金のような細長い棒の先端に蝶々の絵を貼り付け、絵に穴を開け、差し込んだ。棒は絵の下まではみ出していて、下から棒を操作すれば、蝶々がお花の周りを飛んでいるように動かせる。気に入った。今思えば、絵の領域を超えた工作だったかもしれませんが、そのまま提出しました。みんなの絵と一緒にしばらく廊下に飾られたのち、市か県の小学生の絵の展覧会に飾られ、佳作か何かを頂戴することとなりました。もはや原型とは全く別物で、家族ですら「店に飾られている絵」から着想を得ているとはわからない。けれど、当時の私は、"こういう花の絵"に需要があることを知りました。以降、私はその絵に敬意をはらうようになりました。そして大人になって、その絵の作者が、アンディ・ウォーホルだということを知ります。       当時の自分を評価したいのは、単に「高い絵」として済ませなかったところ。「高い=良い」ではなく、何が良くて、どうしてこの作品が評価されているのかに疑問を持ち、自分の感覚で絵に接触していったこと。そして、父が、"高い絵"としか説明しなかったことは、結果として、私に最高の学びの機会を与えてくれました。もしあの時、「これはポップアートの巨匠の作品でね…」と説明をされていたら、【すごいもの】と受け入れ、自分で描いてみようとは思わなかったはずです。ましてや、蝶々を飛ばすだなんてしなかったはず。     記号化された価値 アンディ・ウォーホルは「名前が一人歩きしている」作家だと、揶揄されることもあります。彼はあえて「シルクスクリーン」という機械的な手法を使い、サインすら他人に書かせることがあったそうです。「ウォーホルだから見る」という現象そのものが、彼が仕掛けた皮肉なアートの一部でもあります。 キャビアもまた、同じではないでしょうか。「三ツ星レストランが提供しているキャビアだからおいしい」「百貨店で販売されているキャビアだから良いもの」それぞれから肩書きが外れたとき、果たして同じ評価がされるのか。これらと横並びになったとき、私たちの扱うキャビアがどう評価されるのか、試してみたくなりました。 8月末に行ったイベントは、まさに「記号化された価値」への抵抗と挑戦でした。イベント内で提供したキャビアは、・マダムで一番お求め頂きやすい価格のキャビア・全世界で60~70%のシェアを持つメーカーのキャビア・全世界で最も実店舗数を多く持つ世界的有名キャビアブランドのキャビア 容器やラベルが評価に影響しないよう、同一サイズの瓶に容れてのテイスティング。 提供の際に大事にしたことは、【私が、良い悪いの評価をしないこと】評価をするポイントをお伝えし、体験なさった皆様が、ノンラベルのキャビアと対峙したときにどう感じられるのか、皆さまに委ねることを心がけました。 どれを選んだっていい。ご自身で判断されたのであれば、どれを選んだって正解です。しかし、キャビアにいたっては他者の評価が採用されていることが実に多い。だからこそ、誰かの評価を確認したり、なぞるのではなく、「自分の心がどう動くのかを愉しむ」。答えのない、贅沢な時間を提供したかった。 ……といいつつも「マダムのキャビアが断然おいしい」とお声をいただけたのも事実として、書き残したいと思います。♡♡♡     幼い私が絵の持つ魅力に触れられたのは、「権威」と「実体」を切り離して見ていたからだと思っています。だからこそ、単なる試食会のようなものではなく、「凛」とした空気感の中、自分自身の感覚と対峙できるようなアートを味わうようにキャビアを咀嚼する。そんな「知的な静寂」を感じる美術館のような雰囲気で皆様をお迎えできるよう準備してまいりました。   当日はパネルを飾り、お花を飾り、マダムのプロダクトたちを飾り、そして、大事な絵も。(勿論、作者や作品名は明かさず、ノンラベルを徹底して)今回、改めてこの絵のすごさを知る体験をしました。搬入時、なにもない会場にどんどんものが運び込まれ、空間を作りこんでいく中、最後に登場したのが「絵」。絵が適所につくまでは、それぞれの物が漂って、浮遊しているように見えていました。しかし、素晴らしいインストーラーの手によって、適所に飾られた瞬間、実に不思議な感覚が走りました。それぞれの物が席に着いたというか、最後のピースがハマったというか、本当に不思議な感覚を抱きました。それは私だけではなく、会場にいた相棒とも呼ぶべきスタッフも同じ感覚になったと言います。   「贅沢品という枠を超えた先にある味わい」イベントを通して、それを一番味わったのは私だと思います。力をお貸しくださった方々、時間を共にしてくださった皆様に、心から感謝を申し上げます。有難うございました。 ……会場の雰囲気や、おいでくださった皆様、当日力を貸してくれた方々は、もう本当に素敵で…思い出すだけでうるうるしてきます。肝心の私は、緊張しすぎて言いたいことの1割も伝えられていないポンコツぶりでした。。。だからこそ、より周囲の支えの力強さを実感できた、とんでもなく有り難い機会でした。皆様、本当に有り難うございました♡...

私と、ウォーホル

私には、大事な絵があります。     実家はこじんまりとした、町のフレンチレストランを営んでいました。父がシェフで、母がサービスをして。たしか私が小学校二年生のときに開店したのだと思います。そのお祝いとして、叔母が両親にその絵をプレゼントしてくれました。白いキャンバスに黒いサインペンのようなもので大きなお花が描かれていて、花瓶やお花の一部に、パステルカラーの水色やピンクや黄色の絵の具が塗られていて。輪郭に沿ってきちんと色が塗られているわけではなく、はみ出しているところもあれば、塗りきれていない場所もあって。周囲の風景などはなく、それらだけがキャンバスに描かれている絵。唯一、その絵について父から教わったことは、「めっちゃ高いんやぞ」でした。小学生の私には、とても理解ができませんでした。すごい絵や評価されている絵は、油絵のような色が沢山使われているもので、自然の情景や、まるで人物がそこにいるかのような絵だと思っていたし、教科書に載っているのは大体そういうものでしたし。それとは真逆の絵が評価されていて、高価だなんて。 「この絵の何がいいんだ?私でも描けるぞ」そう思いながら、ずーーーっと見てた。ただただ、ずーーーっと見てた。自分の身長よりも大きな絵だったため、日々いろんな角度から見ていました。引いたり寄ったり見上げたり、椅子にのって真横から見たり、時には寝ころがって見たり。 そして小3か小4の頃、学校の宿題で絵を描かなければいけませんでした。私は絵を描くことが嫌いでした。理由は、「上手に描けないから」。描きたいものもないし、上手く描けるものもないし、どうしたものかと悩んでいたとき、「そうだ、あの絵を真似ればいいんだ!」とひらめいた。画用紙を持って店に行き、とりあえず真似をした。上手くいかない。全然上手に描けない。…おかしい。多分何枚か描きました。それでも全然上手に描けない。そこで気付いた「この絵、……上手だ」。 小学生ながらに、その絵の絶妙なバランスの良さに気付きました。ただ眺めているときにはわからなかった均衡のようなものに触れ、絵の魅力の一端を知った気がしました。しかし、そこからも題材は変えず、絵と同様、中央に花瓶を置き、花を描いた。数本の大きな花ではなく、いっぱいの小さい花を描いて、色を塗った。絵具ではなく、色鉛筆で水色や黄色やピンクにお花を塗った。イマイチだった。上手でも、面白くもない、小学生が描いたって感じのつまらない絵。 そこから何故そうしたかは覚えていないけれど、針金のような細長い棒の先端に蝶々の絵を貼り付け、絵に穴を開け、差し込んだ。棒は絵の下まではみ出していて、下から棒を操作すれば、蝶々がお花の周りを飛んでいるように動かせる。気に入った。今思えば、絵の領域を超えた工作だったかもしれませんが、そのまま提出しました。みんなの絵と一緒にしばらく廊下に飾られたのち、市か県の小学生の絵の展覧会に飾られ、佳作か何かを頂戴することとなりました。もはや原型とは全く別物で、家族ですら「店に飾られている絵」から着想を得ているとはわからない。けれど、当時の私は、"こういう花の絵"に需要があることを知りました。以降、私はその絵に敬意をはらうようになりました。そして大人になって、その絵の作者が、アンディ・ウォーホルだということを知ります。       当時の自分を評価したいのは、単に「高い絵」として済ませなかったところ。「高い=良い」ではなく、何が良くて、どうしてこの作品が評価されているのかに疑問を持ち、自分の感覚で絵に接触していったこと。そして、父が、"高い絵"としか説明しなかったことは、結果として、私に最高の学びの機会を与えてくれました。もしあの時、「これはポップアートの巨匠の作品でね…」と説明をされていたら、【すごいもの】と受け入れ、自分で描いてみようとは思わなかったはずです。ましてや、蝶々を飛ばすだなんてしなかったはず。     記号化された価値 アンディ・ウォーホルは「名前が一人歩きしている」作家だと、揶揄されることもあります。彼はあえて「シルクスクリーン」という機械的な手法を使い、サインすら他人に書かせることがあったそうです。「ウォーホルだから見る」という現象そのものが、彼が仕掛けた皮肉なアートの一部でもあります。 キャビアもまた、同じではないでしょうか。「三ツ星レストランが提供しているキャビアだからおいしい」「百貨店で販売されているキャビアだから良いもの」それぞれから肩書きが外れたとき、果たして同じ評価がされるのか。これらと横並びになったとき、私たちの扱うキャビアがどう評価されるのか、試してみたくなりました。 8月末に行ったイベントは、まさに「記号化された価値」への抵抗と挑戦でした。イベント内で提供したキャビアは、・マダムで一番お求め頂きやすい価格のキャビア・全世界で60~70%のシェアを持つメーカーのキャビア・全世界で最も実店舗数を多く持つ世界的有名キャビアブランドのキャビア 容器やラベルが評価に影響しないよう、同一サイズの瓶に容れてのテイスティング。 提供の際に大事にしたことは、【私が、良い悪いの評価をしないこと】評価をするポイントをお伝えし、体験なさった皆様が、ノンラベルのキャビアと対峙したときにどう感じられるのか、皆さまに委ねることを心がけました。 どれを選んだっていい。ご自身で判断されたのであれば、どれを選んだって正解です。しかし、キャビアにいたっては他者の評価が採用されていることが実に多い。だからこそ、誰かの評価を確認したり、なぞるのではなく、「自分の心がどう動くのかを愉しむ」。答えのない、贅沢な時間を提供したかった。 ……といいつつも「マダムのキャビアが断然おいしい」とお声をいただけたのも事実として、書き残したいと思います。♡♡♡     幼い私が絵の持つ魅力に触れられたのは、「権威」と「実体」を切り離して見ていたからだと思っています。だからこそ、単なる試食会のようなものではなく、「凛」とした空気感の中、自分自身の感覚と対峙できるようなアートを味わうようにキャビアを咀嚼する。そんな「知的な静寂」を感じる美術館のような雰囲気で皆様をお迎えできるよう準備してまいりました。   当日はパネルを飾り、お花を飾り、マダムのプロダクトたちを飾り、そして、大事な絵も。(勿論、作者や作品名は明かさず、ノンラベルを徹底して)今回、改めてこの絵のすごさを知る体験をしました。搬入時、なにもない会場にどんどんものが運び込まれ、空間を作りこんでいく中、最後に登場したのが「絵」。絵が適所につくまでは、それぞれの物が漂って、浮遊しているように見えていました。しかし、素晴らしいインストーラーの手によって、適所に飾られた瞬間、実に不思議な感覚が走りました。それぞれの物が席に着いたというか、最後のピースがハマったというか、本当に不思議な感覚を抱きました。それは私だけではなく、会場にいた相棒とも呼ぶべきスタッフも同じ感覚になったと言います。   「贅沢品という枠を超えた先にある味わい」イベントを通して、それを一番味わったのは私だと思います。力をお貸しくださった方々、時間を共にしてくださった皆様に、心から感謝を申し上げます。有難うございました。 ……会場の雰囲気や、おいでくださった皆様、当日力を貸してくれた方々は、もう本当に素敵で…思い出すだけでうるうるしてきます。肝心の私は、緊張しすぎて言いたいことの1割も伝えられていないポンコツぶりでした。。。だからこそ、より周囲の支えの力強さを実感できた、とんでもなく有り難い機会でした。皆様、本当に有り難うございました♡...